A little sophia, at least sobriety. [はてなブログ出張所]

「わずかでも智を、せめて素であれ」― アルコール依存症と一生向き合うためのブログ

アルコール依存症で初入院するまで(1):健康診断で γ-GTP が200を超えてから【覚醒編】

自分の場合、アルコールを飲み始めてから入院するまでのあいだ、約20年の月日が必要でした。アルコール依存症にいつなったのかは、正直にいってわかりません。ただ自分の場合、酒を恒常的に(つまり毎晩のように)飲み始めたのは大学生の頃からでした。酒への耐性も、遺伝的に人より強いほうでしたから、一晩で飲む量も多く、いわゆる「ほどほどの量(ビール中瓶で1〜2本)」程度で収まるなんてことは、滅多にありませんでした。たいていビールであれば500ml缶で最低でも3〜4本は飲んでいましたし、酷いときは焼酎や泡盛、ウィスキー1本720mlを、一人で空けてしまうこともザラでした。つまりは、「これくらいの量を15年から20年も飲み続けると、アルコール依存症になる可能性が高い」と言われるような飲み方を、ずっとしてきたわけです。そうしたら、本当に飲み始めて20年かそこらで、ちょうどアルコール依存症で入院したのでした。

ちなみに私の場合、「酒を飲むと暴れる」といった酒癖の悪さは幸いにしてありませんでしたが、酒を一定量飲みすぎると、酔いつぶれて寝てしまうタイプでした。そしてブラックアウト、つまり酒を飲んで気を失ってしまった経験は数えきれないほどあり、その意味では酒で周囲に迷惑はさんざんかけてきました。目覚めたら、どうやって家まで帰ってきたのか記憶がないこともしょっちゅうでしたし、起きたら大変なケガをしていたり、ケータイや財布をなくしたことも珍しいことではありませんでした。急性アルコール中毒で倒れて吐瀉したり、突然スリープモードに入ったかのように動かなくなって、病院へ緊急搬送されたことも2度ほどありました(ちなみにブラックアウトというのはPCでいえば突然電源をブツリと切ってしまう状態に近く、ニューラル・ネットワーク(脳神経)は確実にダメージを受けているそうです。それが結果として脳萎縮として現れ、アルコール性認知症などの症状にもつながっていくのだそうです)。

さて、そんな自分でしたが、30代の前半までは、そんな無茶苦茶な飲み方をしていても、健康診断ではいつも肝機能の数値には全く問題がなく、A判定をもらっていました。しいていえば、ビールを飲むので尿酸値が少し高いくらいのもので、「自分はやはり肝臓が強いのだ」くらいにしか思っていませんでした。

しかし、いつまでもそのような状態は続きません。肝臓は、確実にアルコールの分解でその機能を限界まで使い果たし、それが血液検査の結果に顕れるようになってくるからです。私が自分の酒の飲み方を改めようと思った最初のきっかけは、30代のちょうど中頃、アルコール好きならば知らぬものはいない、肝機能を表す γ-GTP (ガンマ・ジーティーピー) 値が200を超え、「ただちに病院にいって再検査を受けなさい」との診断結果が出たときでした。これを会社で受け取ったときは、本当にすぐさまGoogle Mapsで近くの消化器内科を検索し、ただちにエコー検査を受けました。診断結果は、アルコール性の脂肪肝。お医者さんに見せてもらった自分の肝臓の写真は、まるでフォアグラのように真っ白になっていました。

ただそのとき言われたのは、「いまの飲み方を続ければ、脂肪肝の次は肝炎、その次は肝硬変となり、最後は肝臓がんで20年で死にますよ」ということと、「いまより酒の量を半分以上に減らして、休肝日を週2日で設けてください。あとは適度な運動を」ということだけでした。そう聞いた自分は、「え? それだけでいいの?」というのが正直なところでした。何より、いまのまま飲んでいても20年も生きられるのか、ということのほうがショックというか、ラッキー&楽勝、という感覚でした。これは単に肝臓がとりわけ人間の臓器の中でも強力かつ肥大であり、「沈黙の臓器」と言われる特性を持っているからに過ぎないのですが、いま思えばずいぶんと甘い考えだったと、恥ずかしい思いでいっぱいです。

それはさておき、この数値が出たときというのは、健康診断前日の夜も酒を控えることなく、ばっちり焼酎を一瓶空けていましたし、確か診断当日の朝にも「迎え酒」を飲んでいた記憶すらあります。つまり平日だろうと休日だろうと、常に朝から酒を飲んでいたわけです。もちろん酒で仕事にも支障が出ていましたし、意識も明瞭ではなく、体調が悪化した状態(疲労感・倦怠感)も続き、さすがに自分でも「やっぱりか」と「このままではよくない」という思いもありました。この時点では、まだ自分がアルコール依存症だという明確な自覚はありませんでしたが、「酒にこのまま溺れてはまずい」「酒を飲むのではなく、酒に飲まれているような人生はまっぴらだ」という思いは強くありました。そこでこの診断書がきっかけとなって、ようやく人生で初めて、酒量を減らそうと思い立ったわけです。

ここから、自分なりに酒量を減らすための対策に、あれこれと取り組む日々が始まりました。(続く)

 

【まとめ:自分なりに重要だと思うこと】

  • 肝臓はそもそも内蔵として強い存在であり、”痛み”などの分かりやすいアラートを出してくれない「沈黙の臓器」。それゆえに、「自分は肝臓が強い」という自己認識は、アルコール依存症を自覚するための妨げとなる。否、むしろアルコール依存症への道をこじ開けてしまう
  • 「酒癖が悪いわけではない(自分はいわゆる”酒乱”ではない)」という自己認識は、酒で他人に迷惑をかけていないこととイコールではないし、ましてアルコール依存症かどうかとは無関係である(酒を人並み以上に飲んでいれば、必ずなんらかの迷惑はかけているし、依存症につながる)