A little sophia, at least sobriety. [はてなブログ出張所]

「わずかでも智を、せめて素であれ」― アルコール依存症と一生向き合うためのブログ

アルコール依存症で初入院するまで(3):睡眠薬の効き目の薄れと睡眠障害の始まり【没落編】

睡眠薬。それは私にとって、最初のうちは驚くほどよく効きました。人によっては、副作用なのか、それとも薬が効きすぎてしまうのか、「目覚めがよくない」「起きたあともフラついてしまう」などの症状が出てしまい、薬が合わない方もいるようです。しかし私の場合はそうしたこともなく、7〜8時間の熟睡のうち、きっぱりと目を醒ますことができました。

「お酒などに頼らなくても、こんなに眠ることができるのか!」お酒を飲み始めてから10数年、飲まなかった日なぞない、というくらい毎晩のように飲んでいた自分にとって、睡眠薬との出会いは、それこそ革命的な出来事でした。もっと早く、この存在と出会っていればよかったと思ったほどです。

しかし、そんな睡眠薬との蜜月の日々は、1年足らずでゆっくりと終わりを迎えていきます。これはあくまで私の場合のお話ですし、医学的な根拠があるわけではありませんが、あくまで休肝日を作るための「補助」の役割として睡眠薬を使用していたのが、よくなかったのだと思います。次第に私は、睡眠薬を飲まないと熟睡できない身体になっていきました。つまりお酒を飲むだけでは、なかなか眠りにつくことができなくなり、眠りも浅くなっていきました。

これはまずいと思い、まずはお医者さんに睡眠薬の処方量を増やしてもらいました。しかし今度は睡眠薬だけを飲んでも、以前ほどの熟睡感を得ることができなくなっていきました。おそらく、アルコール(アセトアルデヒド)が脳内に残っていたからだと思います。非常に強い睡眠薬のはずなのに、寝床についてから1時間経っても2時間経っても、一向に眠くならない。結局朝を迎えてしまい、コンビニに酒を買いに行く。そしてお酒をあおって寝る。そんな日がちらほらと増えていくようになりました。

ちなみに、睡眠導入剤とアルコールの併用、つまり両者を一緒に飲むことは、固く禁じられています。なぜならそれは双方の効果を非常に強め、より依存性を高めてしまうからだといいます。実際お医者さんにも、「アルコールと一緒に服用すると、自覚のない奇異な行動に走ったりするから、絶対に一緒に飲んではいけない」と念を押されていました。実際、自分が服用された薬名で検索すると、そのWikipediaにはまさにアルコールとの併用によって自殺した著名人の名前が記載されていたり、強力な昏睡作用をもたらすことから諸外国では「レイプ・ドラッグ」などと呼ばれ悪用され、すでに販売が禁じられていることなどを知りました。ですから自分も、もちろん最初はその禁忌を守っていました。とある国への海外出張のときは、きちんと別の薬を処方してもらったりもしました(その代用薬が全く効かず、眠れなくて辛い思いをしましたが……)。

しかし上のような状態が続いてしまうと、先程も述べたように「睡眠薬だけでは眠れない→仕方なく、睡眠薬が切れたと思うタイミングで酒に手を出してしまう」という場合も出てきます。あるいはその逆に、「お酒を飲んでも眠れない→仕方なく、お酒が薄まったと思うタイミングで睡眠薬を服用する」というケースも出てきます。

「完全な併用は絶対に避けなければ」と頭ではわかってはいても、だんだんその状態が近づいてきます。翌日、どうしても朝早くに避けられない用事があるときなどは、完全に両者を同時に服用した日もありました(※絶対に真似をしないでください!)。つまり、強いお酒で一気にグイッと睡眠薬も飲むわけです。そういうときは、確かにぐっすりとよく眠れます。実際には「昏睡」していたのでしょう。それは自分にとって「安心」でもあり、同時に「恐怖」でもありました。こんなことを続けていたら、絶対にいつかボロボロになってしまうという予感があったのです。

そうしたことが幾度も続いた結果、自分はこう考えるようになりました:「こんな怖い思いをするのであれば、もういっそのこと睡眠薬は一切やめて、お酒だけを飲むことにしよう」と。そう考える自分を後押ししたのは、「脂肪肝だって、酒量を自分でコントロールして、ちゃんと治せたじゃないか」という成功体験でした。しかしいま思えば、わずか1年程度「節酒」ができたくらいで、自分の考えは大変に甘かったといわざるを得ませんでした。

そしてこれが自分の場合、いわゆるアルコール依存症の典型的な症例の1つ、「連続飲酒」へとつながる重大な引き金となっていったのです。(続く)

【まとめ:自分なりに重要だと思うこと】

  • 個人差は大きいが、睡眠薬もまたアルコール同様に耐性がついていき、次第に効果は薄れていく。また、睡眠薬を飲まないと熟睡感が得られず、アルコールほどではないが睡眠薬それ自体への依存も進んでいく
  • 特に危険なのは、アルコールと睡眠薬の併用である(絶対にやってはならない)。これは互いの効き目を非常に強くするが、それゆえに、両者への依存を強めるきっかけともなる